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1.5兆円の廃棄ロスを利益へ。ZAI株式会社が「はざいっぽ」で挑む、事業活動の負債を資産に変える“静かなる革命”

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ZAI株式会社

代表取締役 神賀 英悟様

目次

日本の基幹産業である建設・製造現場には、長年「当たり前」として見過ごされてきた莫大な損失がある。年間約3兆5,000億円と同社が推計する資材の廃棄ロスだ。この「現場の悲鳴」とも言える状況を原体験に、建設・製造業のみならず、全ての企業の収益構造を根本から変えようとしているのがZAI株式会社である。

同社を率いる神賀英悟氏は、数千万円の借金を背負い、人生の終わりを意識するほどのどん底から這い上がってきたという異色の経歴を持つ。彼が見据えるのは、単なるコスト削減だけではなく、その先にある「日本のものづくり文化」の再興だ。本記事では、端材マッチングプラットフォームアプリ「はざいっぽ」に込められた情熱と、同社が描く5年後の新常識に迫る。

現場で捨てられる「職人の給料」に、かつての親方は憤った

神賀氏の創業の原点は、かつて彼自身が建築現場の職人を束ねる「親方」だった時代にある。10年以上にわたり建設業界で汗を流してきた彼を襲ったのは、コロナ禍明けに直撃した「ウッドショック」や「ロシアショック」だった。

神賀氏:「物価高騰の影響で材料費が跳ね上がってどこの企業も苦しみました。工事代金の多くが材料費に消えました。工事代金が100万円あっても、材料に60万円かかり、さらなる高騰で最終的に人件費を払う余裕がなくなる。そんな状況が約1年続きました」

結果、数千万円という莫大な借金を抱えることとなり、精神的に追い詰められ、毎日死ぬことばかりを考えていたと振り返る。その絶望の淵で訪れたゼネコンの現場。そこで目にした光景が、彼の人生と事業の方向性を決定づけた。

神賀氏:「自分たちは生活費すらままならないほど困窮しているのに、目の前のゴミ置き場には、まだ使える新品同様の材料が山のように捨てられていたんです。『余ったから』という理由だけで、職人何人分もの給料に相当する価値が無造作に廃棄されている。その光景に、狂おしいほどの怒りを感じました」

建設業界では、資材が余れば細かく砕いたり、わざわざ手間を掛けて捨てるのが「当たり前」の習慣となっている。しかし、神賀氏にはそれが「職人の給料」を捨てているようにしか見えなかった。この不条理を打破したいという強い想いが、ZAI株式会社の基幹プロダクトである「はざいっぽ」の誕生につながったのである。

年間1.5兆円のロスを削減し「汗をかく人」に利益を還元する

ZAI株式会社が提供するサービスは、一言で言えば「事業活動における物の無駄を徹底的になくす」ことだ。神賀氏によれば、日本の建設現場で発生している不要資材と、その廃棄にかかるコストの総額は、年間約1.5兆円と同社では推計している。この莫大な金額を削減できれば、現場で働く人々の賃金や企業の利益として還元できるはずだ、というのが彼の主張である。

神賀氏:「多くの企業は、収益を上げようとする際にまず『新規事業』や『売上拡大』を考えます。しかし、その手前で、日常的に行っている『無駄な行動』や『無駄なお金』を減らすだけで、収益率は劇的に改善します。売上を増やすよりも先に、利益を増やす。そのための行動変容を促すのが私たちの役割です」

具体的には、プラットフォームを通じて社内や現場間で資材や備品など、モノの情報をリアルタイムで共有する。例えば、ある担当者が「念のため」と保管し忘れてしまった資材や、使い終わった備品を可視化することで、他部署での重複購入を防ぐ。

ここで重要なのは、ZAIが「二次販売(転売)」ではなく、あくまで「必要な人へ譲る・渡す(ただで動かす)」というマインドを重視している点だ。

神賀氏:「中古資材を安く売ろうとすると、買う側は『送料はどうなるのか』『品質は大丈夫か』と、手間やリスクを考え始めます。結果として、商社に電話して新品を届けてもらう方が楽だ、となってしまう。しかし、『ただで分ける』という仕組みであれば、需要側は『ありがとうございます』と自ら取りに来ます。供給側も、捨てるために細かく砕く手間をかけるより、誰かにそのまま持って行ってもらう方が楽になる。この『棄てる手間が無くなり楽ができる』というインセンティブこそが、物を動かす最大の鍵なのです」

業界の壁を超え、オフィスワークや製造業へ広がる「無駄ゼロ」の輪

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当初、建設業界の課題解決から始まった「はざいっぽ」だが、そのニーズは今、あらゆる業界へと広がっている。

「企業の規模や業種を問わず、物にまつわる課題の根本原因はすべて同じだという確信を得ました。それは『使い終わった瞬間、それまで必要だったモノの管理を放棄する』という人間の行動特性です」と神賀氏は分析する。

神賀氏:「実際、ある実証実験では、トップダウンで導入を決めた企業の現場社員から「新しいことを覚えるのは面倒だ」と猛反発を受けたことがあった。しかし、いざ運用を始めると、重い資材を捨てるために粉砕していた重労働がなくなり、現場の負担が劇的に軽減されたことで、社員たちの意識は一変したという。また違う企業では、リアルタイムでモノ管理ができたことで探す手間や重複購入がなくなったという実績もでた。新しい事は『面倒だ』と思っていたことが、実は自分たちを楽にするものだったと気づく。この体験をすべての事業現場に届けたい」

現在では、製造業の資材管理や、ゼネコンのオフィスにおける事務用品の在庫管理など、現場以外の領域でも導入が進んでいる。Excelやスプレッドシートで月に一度棚卸しをするような手間が掛かり、かつタイムラグのある管理ではなく、デジタルプラットフォームによる「リアルタイムの把握」が、企業の体質を筋肉質に変えていく。

「お金のためにやらない」——どん底を知る経営者の揺るぎない軸

神賀氏の経営判断には、明確な軸がある。それは「自分のためではなく、人のために何ができるか」を最優先し、決してお金に縛られないことだ。

神賀氏:「私自身の経験から言えるのは、お金は悪いことをしても集めることができます。しかし、私たちがやろうとしているのは『稼ぐこと』そのものではなく、社会にとって本当に必要なことを成し遂げることです。お金は、その結果としてついてくるものだと確信しています」

数千万円の借金を抱えながらも、目先の日銭を稼ぐことではなく、社会全体の構造改革という大きな山に挑み続ける姿は、同社の社員にも強いメッセージとして伝えている。神賀氏が採用において最も重視するのは、スキルや学歴ではなく「自社のサービスを、そして経営者の想いを愛せるかどうか」だという。

神賀氏:「自分がこの事業を諦めたら、救えなくなる人が何百万人、何千万人と出てくる。その強い自負を持って進んでいます」

神賀氏は、会社を「自分のためのもの」とは考えていない。社員に対しても、会社を利用して自分の夢を叶えてほしいと伝えている。この「利他」の精神こそが、急速な成長を支える同社のエネルギー源となっているのだ。

「日本のものづくり」を世界へ。熟練の技術を次世代へつなぐ壮大な構想

ZAI株式会社の挑戦は、物のロスをなくすだけにとどまらない。神賀氏が描く未来には、より壮大なロードマップが存在する。

その一つが、不要になったがまだ使える物を集約し、一般消費者に開放する「物のターミナル」の設立だ。ここでは、DIYを始めたい消費者が自由に資材を使えるだけでなく、高齢化した熟練職人が技術を伝承するワークスペースも併設される計画だ。

神賀氏:「かつて日本がバブルを享受できたのは、高度経済成長期に現場の人々が汗水垂らして物を作ったからです。しかし、その後日本は『数字で戦う経済』にシフトし、物づくりの現場を敬遠するようになってしまいました。その結果、世界との競争に負け続けているのが今の日本の姿です」

宮大工の父を持ち、建築業界と密接な家庭環境で自身も職人として育った神賀氏は、日本の強みである「物づくりの文化」を再燃させたいと考えている。ターミナルを通じて子供たちが物づくりに触れる機会を増やし、熟練職人にセカンドキャリアの場を提供することで、失われつつある技術を次世代へとつないでいく。

神賀氏:「このターミナルを世界中に展開し、日本の職人の技術で世界中の人々の生活を豊かにする。そこまでを視野に入れています」

この構想は、単なるビジネスモデルの域を超えている。それは、効率化という名のもとに切り捨てられてきた「現場の誇り」を取り戻すための挑戦でもあるのだ。

5年後、私たちが知らない「新常識」が生まれる

インタビューの最後、神賀氏は次のように締めくくった。

神賀氏:「これから起業や新規事業に挑戦する方には、周りに反対されようがお金がなかろうが、『自分にしかやれないことだ』と確信できる事なら絶対にやり通してほしい。信念が揺らがなければ、道は必ず開けます」

「5年後、今はまだ皆さんが知らない『新常識』が作られています。その時、たくさんの人が幸せになっている。私たちはそのほんのお手伝いをさせていただいているはずです」

ZAI株式会社が掲げる「無駄をなくし、現場で働く人々に還元する」という挑戦。それは、働く人の尊厳を守り、日本経済を再生させるための“静かなる革命”と言える。かつてゴミの山を前に憤った一人の男親方の想いは、今、日本経済を根底から揺り動かす大きなうねりとなりつつある。神賀氏の「想い」が結実したとき、日本の企業現場はかつてない輝きを取り戻しているに違いない。

記事要約

  • 原体験と創業:元建築業の神賀英悟代表が、コロナ禍での経営危機と、現場で大量に捨てられる資材(職人の給料以上に相当する価値)の不条理を目の当たりにしたことが「はざいっぽ」の原点。
  • 社会課題の解決:年間約1.5兆円と同社が推計する建設資材の廃棄ロスを削減し、浮いたコストを現場の利益や人件費に還元することを目指す。
  • サービスの本質: 単なる二次販売ではなく、社内や現場間のリアルタイムな情報共有により「捨てる手間」を「分かち合う喜び」に変え、企業の収益構造を改善する。
  • 経営理念:「お金のためではなく、社会のために」という強い信念に基づき、スキルよりも自社サービスへの愛着と情熱を共にする人材を重視する。
  • 今後の展望:物づくりの技術を継承する「ターミナル」を建設し、熟練職人のセカンドキャリア支援や若年層への教育を通じて、日本の物づくり文化を再興し世界へ発信する。

取材企業の概要

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企業名
ZAI株式会社
住所
〒466-0064
愛知県名古屋市昭和区鶴舞1丁目2番32号 STATION Ai 4階
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