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注目企業特集

伝統工芸を「世界に通用するギフト」へ。元大塚家具・匠大塚の知見を活かし、アルテスペースが浅草から挑む日本のものづくり販売支援

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株式会社アルテスペース

代表取締役 千葉竜哉様

目次

地方の伝統工芸がいま、存続の危機に瀕している。なかでも「売り方」の課題は、現場において深刻だ。少子高齢化による後継者不足に加え、優れた技術を持ちながらも、現代の市場ニーズや海外需要に合わせた「売り方」に課題を抱えるケースは少なくない。

この構造的な課題に対し、現場で実践的なアプローチを積み重ねているのが、株式会社アルテスペースである。同社の特徴は、伝統工芸の「作る側」と「売る側」の間に立ち、現場起点で販売の最適化を行う点にある。

代表取締役の千葉竜哉氏は、大塚家具および匠大塚で長年キャリアを積み、2万人以上の接客を通じて「世界の逸品」と「顧客の心理」の両面を熟知してきた人物だ。同氏が2023年8月に設立した同社は、伝統工芸品販売を軸に、内装業や店舗コンサルティング、さらには法人向けノベルティ提案や物流不動産まで多角的な事業を展開している。その根底にあるのは、震災で打撃を受けた故郷への想いと、日本のものづくりを「持続可能な商売」へと引き上げようとする真摯な挑戦である。

震災の記憶と「雄勝石」の誇りを守るために

千葉氏の歩みは、2011年の東日本大震災を抜きには語れない。彼の出身地である宮城県石巻市雄勝町は、約600年の歴史を持つ「雄勝硯(おがつすずり)」の産地として知られる。原料となる雄勝石(玄昌石)は、漆黒の美しさと高い耐久性を備え、東京駅丸の内駅舎の屋根を飾るスレート材としても活用されている貴重な天然資源だ。

しかし、震災による津波被害は、雄勝町の人口を4,300人から1,000人以下へと激減させた。産業を支える職人の高齢化も進み、地域経済は衰退の危機に直面した。

千葉氏:「震災後、多くの友人が復興のために地元へ戻りました。しかし私は家族の生活基盤が東京にあり、残らざるを得なかった。育ててくれた地元に何も貢献できていない自分に対し、長年モヤモヤとした思いを抱えていました」

その転機となったのが、2023年8月の起業だ。大塚家具などで培った「本物を見極める目」と「売るためのノウハウ」を活かし、地元の復興支援の一助として雄勝硯をECサイトで世界へ発信することから、同社の挑戦は始まった。

浅草実店舗「Nihon Miyabi浅草本店」に訪れる外国人客が9割を超える理由

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同社は現在、伝統工芸品やギフトを扱うショップ「Nihon Miyabi 浅草本店(ニホンミヤビ アサクサホンテン)」をECサイトと浅草の実店舗で運営している。2024年9月にオープンした浅草の店舗は、当初の想定を超え、来店客の90%以上を外国人観光客が占めている。

Googleマップで「asakusa gift shop」と検索すると、同店は高い評価とともに表示される。その要因は、大塚家具時代に千葉氏が徹底して叩き込まれた「先回りするホスピタリティ」を体現した接客にある。

千葉氏:「言葉が通じなくても、思いは必ず伝わります。私たちの役割は単に商品を売ることだけではありません。日本という国を好きになってもらうきっかけを作ることだと考えています」

その姿勢は、顧客の困りごとに対する献身的な対応にも現れている。例えば、店を訪れたロシア人客が、病気の友人の子供との約束で「忍者衣装の招き猫の江戸木目込人形」を探していた際のエピソードだ。あいにく店では完売していたが、千葉氏は直接メーカーへ電話。別の場所で展示会を行っていることを突き止めると、その客を会場まで案内し、購入の橋渡し役を担った。

千葉氏:「直接の利益にはなりませんが、こうした積み重ねが日本の伝統工芸、そして浅草という街への信頼につながると信じています」

「職人の想い」を「売れる形」に変換するマーケティング支援

千葉氏は、来店客の反応から得た実践的な知見を、全国の職人たちへフィードバックしている。「良いものを作れば売れる」という職人気質に対し、客観的な市場ニーズを掛け合わせることで、伝統工芸を「売れるギフト」へと進化させているのだ。

現在、同店では約130のブランドを取り扱っているが、日本人が好むものと外国人が求めるものには明確な差があるという。

千葉氏:「いま店舗で非常に人気が高いのは、抹茶を点てるための茶道具関連や、富士山・桜といった日本を象徴するモチーフです。私たちはこれらを単なる工芸品としてではなく、現代のライフスタイルに合うギフトとして提案しています」

その一例が、埼玉県越谷市の伝統工芸である五月人形の技術を転用した「侍ボトル(ボトルアーマー)」だ。ワインボトルに被せる装飾用の鎧兜は、企業の海外出張時の手土産として、年間約100社から相談が寄せられている。

さらに同社は、商品の「出口」であるパッケージや梱包の整備にも余念がない。

千葉氏:「ものづくりの現場では、作って箱に入れたら終わりになりがちです。しかし、海外へ持ち帰るお客様にとって、箱の強度はもちろん、日本らしさを感じる演出が重要になります」

現在、浅草の地元の箱職人と協力し、海外発送や長距離移動に耐えうるオリジナルギフトボックスの開発を進めている。また、商品の付加価値を高めるため、風呂敷の使い方やその歴史的背景を解説した英語資料を同梱。こうした「丁寧な解説と梱包」が、伝統工芸品を世界に通用するギフトへと昇華させている。

物販のノウハウを共有し、業界全体の底上げへ

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千葉氏の視線は、自社の利益の先にある「業界全体の底上げ」に向いている。同氏は、自身のInstagramアカウントを通じ、これまで培った物販のノウハウを惜しみなく発信している。

特に店舗マーケティングに関する動画は大きな反響を呼んでおり、商品の陳列方法を解説した投稿は100万回以上の再生数を記録。全国の小売店や職人から「動画を参考にしたら売上が上がった」というメッセージが届くという。

千葉氏:「物販には行動経済学や心理学に基づいた一定のルールがあります。陳列やゾーニング、POPの作り方を少し変えるだけで、商品は売れるようになる。このノウハウを共有することで、日本各地の事業者さんの売上が上がり、地方経済が活性化してほしいと願っています」

現在は、カナダの飲食店が始めた、伝統工芸販売部門へのコンサルティングや商品供給など、その活動領域はさらに海外へと広がっている。海外発送を見据えた梱包・ギフト仕様の整備を急ぎ、日本の逸品が世界中の家庭に届く仕組みづくりを加速させている。

日本のギフトを、世界のスタンダードな選択肢へ

「世界中の人が、大切な人へのプレゼントを考えるときに、当たり前のように日本の伝統工芸品を選択肢に入れてくれる。そんな未来を作りたい」と千葉氏は語る。

株式会社アルテスペースが展開する事業は、ギフトショップ運営、EC、インテリアコーディネートに加え、法人向けオリジナル品提案や物流不動産など多岐にわたる。それら全ての根幹にあるのは、「商売(あきない)を正しく行い、製造元がしっかり儲かる仕組みを作る」という強い意志だ。

元大塚家具・匠大塚で磨かれた審美眼と販売力。それを故郷の復興と日本の文化継承へと注ぎ込む千葉氏の挑戦は、まだ始まったばかりだ。浅草の現場を起点とした取り組みは、徐々に海外へと広がりつつある。

記事要約

  • 創業の背景:2023年8月設立。宮城県石巻市雄勝町出身の千葉氏が、震災で危機に瀕した地元の伝統産業「雄勝石・雄勝硯」を守るべく起業。
  • 「Nihon Miyabi」の成功:浅草の実店舗は来店客の9割以上が外国人。大塚家具・匠大塚流の高度な接客とホスピタリティで、Googleマップ等でも高い評価を獲得している。
  • 需要の最適化:茶道具や日本モチーフ、侍ボトルなど、海外市場の需要に合わせた商品開発や提案を主導。海外発送を見据えた梱包・ギフト仕様の整備も進めている。
  • 販売支援と知見の共有:自社利益のみならず、Instagramで店舗マーケティング(陳列・販促ノウハウ)を無料公開し、伝統工芸全体の売上向上と地域経済への貢献を目指す。
  • 多角的な展開:伝統工芸販売のほか、インテリアコーディネート、法人向けオリジナル品提案、物流不動産など、ものづくりと空間にまつわる事業を幅広く展開。

取材企業の概要

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企業名
株式会社アルテスペース
住所
〒105-0023
東京都港区芝浦1-13-10 第3東運ビル8F

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