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和太鼓の鼓動を、新たな「繋がり」の起点に。合同会社ひえいろくが模索する和文化発信の現在地

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合同会社ひえいろく

代表取締役 桑波田 彩香様

目次

日本の伝統芸能を、いかにして現代の経済活動や社会のニーズに結びつけるか。その問いに対し、一人の和太鼓奏者が「法人化」という手段で答えを探し始めている合同会社ひえいろく。代表の桑波田 彩香氏は、自らが和太鼓のソロ奏者として舞台に立つ傍ら、設立から間もない同社を通じて、伝統文化を軸とした多角的な展開を模索中だ。

個人奏者として直面した社会的制約を突破し、人とのつながりを頼りに事業を広げていく、立ち上げ期のリアルな起業ストーリーを追う。

一打に込める想い。和太鼓ソロから始まる挑戦

合同会社ひえいろくの活動の核にあるのは、代表・桑波田氏が長年向き合ってきた和太鼓、とりわけ「ソロ演奏」の経験である。身体全体を使って打ち鳴らす和太鼓ならではの音は、聴く者の心にダイレクトに響く。桑波田氏は、この実感を伴う文化体験をビジネスの起点に置いている。

同社が現在取り組んでいるのは、主にインバウンド(訪日外国人)を対象とした和太鼓体験教室だ。言葉の壁を超え、日本の伝統的なリズムを肌で感じられる場を提供している。

主なターゲットは、個人旅行者や企業の研修旅行で訪れる外国人グループ。また、和太鼓にとどまらず、和雑貨やこけし、和装といった日本独自のプロダクトを海外へ届ける試みや、和楽器奏者の紹介、さらには折り紙、書道、殺陣といった和文化に携わる知人のネットワークを活かした協力体制を構築し始めている。

一人の奏者としての活動から、文化全体をつなぐ仲間の一員へ。桑波田氏の挑戦は、まだ始まったばかりである。

法人化の決意。奏者が直面した「社会的信用の壁」

桑波田氏が「会社」という形を選んだのは、理想を掲げたからだけではない。個人奏者として活動を続ける中で突きつけられた、極めて現実的な「壁」を打破するためであった。

桑波田氏:「個人で演奏活動をしていた際、ホールや会場を借りようとしても、法人でないと貸してもらえないというケースに何度も直面しました」

社会的信用の指標として「法人格」が求められる日本の商習慣において、フリーランスの奏者が表現の場を確保し続けることには限界があった。自身の演奏の場を守り、より活動の幅を広げるために、彼女は経営者としての第一歩を踏み出した。法人化は、彼女にとって伝統文化を継続させ、さらなる可能性を拓くための切実な「通行証」でもあったのだ。

創業当初、桑波田氏は自らの専門である和太鼓に特化した事業を想定していた。しかし、法人として一歩外へ踏み出すと、予想外の繋がりが事業を拡張させていった。

桑波田氏:「和楽器や和文化に興味がある方々、そして『和』に関わる仕事をしている知り合いが、どんどん周りに増えていきました」

知り合いを通じて新たな専門家を紹介され、また別の分野の担い手と繋がる。そうした草の根的なネットワークの連鎖が、現在のひえいろく社の協力体制を形作っている。津軽三味線奏者とのコラボレーションや、書道、殺陣といった多様なコンテンツを紹介できるようになったのは、意図的に仕組み化したものではなく、桑波田氏が一つひとつの縁を大切に繋いできた結果である。

コンパクトな機動力を武器に、現場に風を吹き込む

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ひえいろく社の現在の強みは、和太鼓という本来は大がかりな芸能を、極めて「コンパクト」に提供できる柔軟性にある。

通常、和太鼓の出演依頼は大人数のチーム編成を前提とすることが多く、広いスペースや大きな予算、複雑な搬入作業が伴う。しかし、桑波田氏はソロ演奏を軸に、とりわけ万博等の大規模イベントでも、大太鼓と津軽三味線のコラボ演奏を行ってきた。限られたスペースや小規模なイベント、例えばホテルの宴会場や小規模なレセプションなどであっても、本格的な和太鼓の響きを届けることが可能だ。

桑波田氏:「一人で、小さいスペースでも演奏できる。この機動力こそが、今の自分たちにできる独自の提供価値だと考えています」

一方で、大規模な要請があれば、これまで培ってきたネットワークから奏者を集め、集団での迫力ある演奏にも対応する。この「一から多まで」を自在に行き来できる軽やかさが、設立間もない同社の大きな強みとなっている。これまでには、東京マラソンの沿道応援や、大阪・関西万博での津軽三味線とのコラボ演奏など、一歩ずつ着実に経験を積み重ねている。

そんな中、経営者として、そして奏者として、桑波田氏が自身の事業の意義を確信した瞬間がある。それは、大阪・関西万博に関連するイベントで演奏していた際のことだ。

その時の演奏を記録した動画には、最後列で聴いていた年配の日本人夫婦の会話が偶然入り込んでいた。津軽三味線の音色を初めて聴いたというその主人が、夏の暑さの中で「風が吹いてきているみたいで、気持ちいいね」と、ポロッと感想を漏らしていたのだ。

桑波田氏:「伝統文化に馴染みがない方にも、演奏を通じてこれほどの印象や、今までにない心地よい感覚を提供できる。その力に、私自身が改めて気づかされました」

その土地に、その場に新しい風を吹かせるような体験。桑波田氏は、自らの演奏と紹介活動を通じて、この価値をより多くの人々へ届けることを目指している。

模索と不安。人脈ゼロからの泥臭い立ち上げ期

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現在の協力体制が築かれるまで、桑波田氏は孤独な試行錯誤を続けてきた。最も苦しかった時期を尋ねると、彼女は「起業当初」と答える。

桑波田氏:「当時はビジネスとしての相談相手もおらず、人脈もほとんどありませんでした。無料の交流会に参加したり、人が集まる場所に片っ端から飛び込んだり。先が見えない不安の中、手当たり次第に動いていました」

何が正解かわからないまま、がむしゃらに行動し続けた経験。その泥臭いプロセスを経て出会った人々が、現在の事業を支えるかけがえのないパートナーとなっている。順風満帆な拡大ではなく、不安を抱えながらも一歩ずつ地面を踏みしめてきたからこそ、今の「繋がり」には強い実感が伴っている。

今後の展望として、桑波田氏は具体的な「物理的な拠点」の設立を構想している。

桑波田氏:「将来的にはスタジオを作り、そこを拠点として地域の人々と一緒に町や村を活性化するような活動をしたいです。国内外の日本文化に興味がある人々が自然と集まり、交流し、相互理解を深められる。そんな場所を作るのが目標です」

現在は「派遣」という形が主だが、拠点を持つことで、より継続的かつ深い文化体験の提供を目指している。伝統芸能を「観るもの」としてだけでなく、人と人を繋ぎ、地域を動かす「ツール」として機能させる。彼女の挑戦は、今まさに活動の幅を広げようとしている。

継続する意志が、未来を拓く

インタビューの締めくくりに、桑波田氏は、起業を目指す者や伝統文化の担い手たちへ、実感を込めたメッセージを残した。

桑波田氏:「最初、本当に何もないところからスタートしました。でも、事業を続けていく中で、多くの方々と繋がり、助けていただけるようになりました。やはり、続けていないとできないことがたくさんあります。困って悩んでいる起業家の力にもなりたい」

何もないゼロの状態からでも、歩みを止めなければ協力者は現れ、道は開ける。和太鼓のソロ奏者から始まった桑波田彩香氏の挑戦。その一打一打が共鳴を生み、日本の美意識を次世代へと、そして世界へと繋いでいくための新たな鼓動を刻み続けている。


※ 訪日外国人の「伝統文化体験」意欲について
訪日外国人旅行者の「滞在中にしたいことの満足度」で「日本の歴史・伝統文化体験」は96.1%と高い評価だったという調査結果がある。
国土交通省 観光庁「訪日外国人の消費動向(2023年 年次報告書)

記事要約

  • 事業展開:和太鼓のソロ演奏・教室を核に、和楽器奏者の紹介、書道・殺陣などの和文化コンテンツの協力体制、和雑貨等の海外輸出を模索中。
  • 起業の背景:個人奏者として会場を借りる際の「法人格」の必要性に直面。活動の場を確保し、社会的信用を得るために法人化を決意。
  • 独自の強み:従来の集団編成ではなく、ソロ演奏から対応可能なコンパクトな機動力。身体全体を使った演奏による、没入感のある体験価値を提供。
  • 提供価値:イベントでの演奏を通じ、伝統芸能を知らない層にも「心地よい風」のような新しい感覚や感動を届けられることを再認識。
  • 創業の苦難:人脈・知識ゼロの状態から、交流会への参加などの泥臭い行動を積み重ね、一つひとつ「和」の繋がりを広げてきた。
  • 今後のビジョン:自社スタジオの設立を視野に入れ、地域活性化への貢献や、国内外の人々が文化を通じて相互理解を深める交流拠点の構築を目指す。

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