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注目企業特集

事業承継・DX時代に注目の株式会社武蔵野――「正しさより早さ」で会社を変える“経営の動くショールーム”とは

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株式会社武蔵野

常務取締役 佐藤 義昭様

目次

高度経済成長期から続く日本企業の多くが、今、事業承継やデジタル変革(DX)という大きな転換点に立たされている。その中で、一介の清掃用品レンタル加盟店から、多くの中小企業経営者が視察や相談に訪れる企業がある。株式会社武蔵野だ。

かつて東京都下の一加盟店として産声を上げた同社は、なぜ日本で初めて中小企業部門で「日本経営品質賞」を二度受賞し、独自の経営ノウハウを外部へ提供するようになったのか。同社の常務取締役を務める佐藤氏へのインタビューを通じて、現場での「汗と涙」から生まれたサービスの本質と、変化を恐れない組織の在り方を紐解く。

「第2の創業」を導いた日本経営品質賞の受賞と教育への情熱

武蔵野の歩みは、大阪に本部を置くダスキンの東京第1号加盟店として1964年に始まった。地域密着で清掃関連事業を展開し、長い歴史を積み重ねてきた同社だったが、現社長の小山昇氏へのバトンタッチを機に、企業としての質が劇的に変化することとなる。小山氏は、創業社長の奥様から「社長をやってくれ」と託された人物であり、血縁関係はない。

この交代劇が、後に同社の軸となる経営コンサルティング事業の種をまくことになった。もともと「学校の先生になりたい」という夢を持っていた小山氏は、人に教えることを何よりも好んでいた。その情熱は社内教育にも注がれ、佐藤氏が入社した36年前の時点ですでに社内では膨大な数の勉強会が開催されていたという。

同社のターニングポイントは、2000年度の「日本経営品質賞」受賞である。ダスキンの加盟店という一地方の中小企業が受賞したことは、全国の経営者に大きな衝撃を与え、視察希望者が殺到することになった。

実際には、全国から経営者が自費で時間と交通費をかけて訪れる状況となり、当初の「無償での見学受け入れ」という形では対応しきれないほどの関心を集めていたという。

当初は本業である「ダスキン事業」を優先しながら無償で社内を公開していたが、遠方から交通費と時間をかけて訪れる経営者たちに対して、本業との兼務で対応するのは失礼であり、事業として真摯に向き合うことで、責任を持ってノウハウを提供したいという判断に至る。そこで2001年、自社の経営ノウハウを商品化した「経営サポート事業」が正式に立ち上がった。これが武蔵野にとっての「第2の創業」であった。

現場の「汗と涙」を体系化する、シンクタンクにはない強み

ただし同社は、経営コンサルティング事業のみを追求しているわけではない。創業以来の基幹事業であるダスキン事業と並行して展開する「両輪経営」を重視している点も特徴だ。現場での実践を継続し続けるからこそ、提供するノウハウにリアリティと再現性が担保されている。

武蔵野のコンサルティングが他のシンクタンクや大手コンサルティング会社と一線を画すのは、その「泥臭さ」にある。佐藤氏によれば、同社には華々しい学歴を持つエリートや、最初からコンサルタントを志望して入社した人間はいないという。

コンサルティングを担うスタッフは、地域密着のダスキン事業や営業部門の最前線で汗を流し、時には部下の育成に失敗して退職者を出してしまうような「悔しさ」や「涙」を経験してきた人間たちである。

佐藤氏:「現場で喜怒哀楽を共にしてきた人間が、企業文化を強くするために自分がやってきたことを提供する」

これが武蔵野のスタンスだ。昨今、理論やテキストベースの情報は容易に手に入る時代となった。しかし、実際に部下とどう向き合い、どうやって組織の連帯感を醸成するかという「定性的」かつ「実体験」に基づくノウハウは、現場で悩み抜いた者にしか語れない。

武蔵野が掲げるのは「現実・現場・現物」の三現主義である。教科書的な知識ではなく、実際に社内で行われている会議の進行方法や、部下とのランチでのコミュニケーションといった極めて具体的な手法を「経営の動くショールーム」として公開している。現役の経営者が自ら実践し、結果を出している仕組みだからこそ、顧客である経営者たちから評価されている。

特に評価されているのが、現役の社長自身がコンサルティングに関与している点だ。実際に組織を率いながら得た知見をそのまま提供できるため、机上の理論にとどまらない「今まさに機能している経営」の共有が可能となっている。

経営者の隣で「ナマの意思決定」を学ぶカバン持ち制度

武蔵野のサービスラインナップの中でもユニークなのが、顧客企業の経営者が武蔵野の社長に四六時中張り付く「カバン持ち」という取り組みだ。平日の間、社長の仕事をリアルタイムで、文字通り「ナマ」で見せるのである。

業務だけでなく、非公式なコミュニケーションの場も含めて体験することで、意思決定の背景や組織運営のリアルを立体的に学ぶことができる。

佐藤氏自身も数年前から、顧客企業の幹部を対象に同様の同行支援を行っている。朝から晩まで一日中、佐藤氏の動きを隣で観察してもらう。部下への接し方、情報の収集方法、そして社長の意思決定を支えるための「報告・連絡・相談」の実践。これらを全てさらけ出す。

このプログラムは、同行する幹部だけでなく、佐藤氏にとっても真剣勝負だ。前日の夕方にはレクチャーを行い、社内の懇親会に同席してもらい、酒を酌み交わしながら本音で語り合う。翌朝からは一日中同行し、最後には疲れ果てるほどの密度で向き合う。

孤独な立場にある経営幹部は、360度の周囲からプレッシャーを受けながらも、弱音を吐かずに奮闘していることが多い。そうした幹部たちとシンクロし、アドバイスを通じて「参考になった」と言われることが、佐藤氏にとっての大きな原動力となっている。

こうした密度の高い時間を共有することで、単なるノウハウの習得にとどまらず、経営幹部同士の心理的な共感や視座の引き上げにもつながっている。

「正しさよりも早さ」コロナ禍で全社員の半分を動かした決断力

経営において、武蔵野が最も重視している価値観の一つが「正しさよりも早さ」である。完璧な100点の意思決定を目指して時間を浪費するのではなく、60点でもいいからまずは着手する。物事は着手した時点で半分は終わっているという考え方だ。

この「早さ」の哲学は、未曾有の危機となったコロナ禍で真価を発揮した。緊急事態宣言により、全国の顧客への直接訪問ができなくなった際、同社は即座にオンライン設備の構築へと舵を切った。驚くべきことに、当時約300人いた社員の約半数を人事異動・配置換えするという大胆な組織改編を断行したのである。

佐藤氏:「答えはお客様しか持っていない」

だからこそ、まずはできることから始め、お客様の声を聞きながら改善(スピード)を積み重ねていく。このサイクルこそが、未知の領域において100点満点に到達するための最短ルートであると考えているのだ。

激しい変化を伴う経営方針に対し、組織内の混乱はないのだろうか。佐藤氏は「変わらないことが安定だと思っているのが一番いけない」と断言する。武蔵野では、長期5か年の経営計画書を数字と言葉で明文化し、毎年「わが社はこう変わっていく」というメッセージを社員に伝え続けている。

「変わり続けることが安定成長の第一原則」という認識が社内で共有されているため、大きな人事異動や環境の変化に対しても、上司の適切な説明があれば社員は理解し、前を向く文化が醸成されている。

また、こうした文化を支えているのが、日々の「環境整備」などの地道な取り組みである。組織の規律や習慣を維持・強化するための活動を継続することで、変化に適応し続ける基盤が整えられている。

「盗みに行く」ほどの謙虚さが育む共創のサイクル

成功事例の共有会や顧客企業への訪問などを通じて、学び合いの循環が意図的に設計されている点も特徴的だ。

武蔵野の経営コンサルティング事業は、今や創業社長だけでなく、事業を引き継いだ二代目、三代目の後継者たちが集まる場となっている。彼らが直面する古参幹部との関係性や組織改革の悩みに寄り添い、単なる指導者ではなく、その企業の「応援団」であることが佐藤氏たちのスタンスだ。

特筆すべきは、同社のベンチマーク(指標)に対する考え方である。武蔵野には、特定の固定されたベンチマーク企業は存在しない。代わりに、同社が指導したことでレベルアップした顧客企業を、自らのベンチマークにするという。

佐藤氏:「教えておいて、そこの企業がレベルアップすると『盗みに行く』。自社がいつまでも正しいと思ってしまったら成長はない」

自分たちのノウハウを真似してさらに進化させた企業があれば、それを素直に「すごい」と認め、逆に教えてもらう。この謙虚な感性こそが、武蔵野が常に最新の成功事例を共有し、自らも成長し続けられる理由だ。

失敗大歓迎、その先にしかない20代、30代の基礎

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これから起業を志す人や、新しいことに挑戦しようとする若い世代に対し、佐藤氏は「失敗大歓迎」というエールを送る。

今の若い世代は、誰かの役に立ちたいという優しさを持つ反面、ストレスに敏感で目立つことを避ける傾向にあると感じている。しかし、社会人として、また経営者としての基礎を固めるためには、がむしゃらに頑張らなければならない時期が必ずある。

佐藤氏:「20代で頑張った分だけの30代を、30代で頑張った分だけの40代を迎えられる」

その過程で起きる失敗は、後から振り返れば大きな学びであり、大したことではない。

武蔵野という企業がダスキンの一加盟店からスタートし、失敗と改善を繰り返しながら、いわば「経営の教習所」とも言える存在としての地位を築いたように、挑戦の先にある失敗を恐れない姿勢こそが、次世代のリーダーに求められる唯一無二の資質である。

武蔵野はこれからも、現場の汗と涙から生まれた生きたノウハウを武器に、全国の中小企業と共に変わり続け、成長の扉を開き続ける。


※ 日本経営品質賞
株式会社武蔵野が2000年度と2010年度に受賞した「日本経営品質賞」は、公益財団法人日本生産性本部が創設した表彰制度である。同賞を2度受賞(再受賞)している。
出典元:経営品質協議会「日本経営品質賞 受賞企業一覧」

※ 中小企業における事業承継の現状
中小企業全体では後継者不在率は一時期より減少傾向だが、中小企業経営者の年齢は高い水準で推移。
出典元:中小企業庁「中小企業白書」(2025年版)

記事要約

  • 創業と変遷:ダスキンの東京第1号加盟店として創業。現社長への交代と2000年度の日本経営品質賞受賞を機に、2001年から経営コンサルティング(経営サポート)事業を開始した。
  • サービスの強み:理論先行のコンサルではなく「現実・現場・現物」を重視。自社を「経営の動くショールーム」として公開し、現場で苦労を重ねた社員が実体験に基づいたノウハウを提供している。
  • 独自の研修スタイル:顧客経営者が武蔵野の社長に同行する「カバン持ち」や、幹部向けの現場同行研修など、意思決定やコミュニケーションの「ナマの現場」を体験させる仕組みが評価されている。
  • 経営哲学:「正しさよりも早さ」を優先し、60点でも即着手するスタイル。コロナ禍では全社員の約半数を配置換えし、迅速にオンライン化へシフトするなど、変化を恐れない組織文化を持つ。
  • 成長のサイクル:指導した顧客企業の成功事例を自社に取り入れる(盗む)という謙虚な姿勢を保ち、教える側と教えられる側の双方が高め合う関係性を構築している。

取材企業の概要

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企業名
株式会社武蔵野
住所
〒184-0011
東京都小金井市東町4-33-8

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