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エンジニアが輝く環境づくりとAIへの挑戦。孤立する現場をなくす、CLINKS河原浩介の信念
CLINKS株式会社
代表取締役 河原 浩介様
- 目次
ITインフラを支えるエンジニアという職業は、現代社会において欠かせない存在だ。その仕事に魅了され、自らも技術者として歩んできたCLINKS(クリンクス)株式会社の代表取締役、河原浩介氏。しかし、彼が四半世紀前に目にしたのは、エンジニアがやりがいを感じながらも、働く環境の歪みによって孤立していく業界の姿であった。
従業員数1,000人を超える組織へと成長を遂げた同社は今、AIという歴史的な変革期を前に、新たなフェーズへと突き進んでいる。創業の原点にある「常駐型エンジニアへの危機感」と、大病を経て強まった「後悔しない」という挑戦への姿勢について、河原氏に話を聞いた。
3年間一度も会わない部下。常駐型エンジニアが抱える「孤独」への違和感
CLINKSの創業は、取材した2026年時点から約24年前に遡る。河原氏はもともと、自らプログラムを組むエンジニアであり、前職では重役も務めていた。独立のきっかけとなったのは、IT業界特有の「客先常駐」という働き方に対する強い疑問だった。
エンジニアがお客さまのオフィスに常駐して働くスタイルは一般的だが、当時は自社との接点が極端に薄くなり、エンジニアが所属企業から切り離されてしまうケースが散見された。河原氏は当時を振り返り、象徴的なエピソードを明かした。
河原氏:「前職の際、自分の部署の人間なのに、3年間一度も会ったことがないという人がいたのです。同じ会社に籍を置いていながら、コミュニケーションが全く取れず、その人が何を頑張り、何に悩んでいるのかすら見えない。その時に『ちょっとこれは、どうなんだろう』と思ったのが、一つのきっかけになっています」
物づくりは純粋に楽しい仕事であるはずだ。しかし、頑張りを見てもらえず、やりたいことがあっても実現できない環境では、その楽しみは失われてしまう。河原氏は、こうした環境面での課題を改善し、エンジニアがもっとモチベーション高く働ける場所を作りたいという想いから、自ら旗を揚げたのである。
未経験者を育成し、インフラの現場を支える人材として送り出す
創業以来、CLINKSの成長を支えてきたのは、ITインフラ領域における独自の教育・供給モデルだ。同社はデータセンターの立ち上げや運用といったインフラ分野を強みとしているが、そこに「未経験者の徹底教育」を組み合わせた点が、市場のニーズに合致した。
河原氏:「当初から行っていたのは、未経験者を一から教育し、実際のインフラサポートの現場についてもらうという仕事です。人手不足が深刻な業界において、教育を施した人材を現場に提供する。おそらく、このスタイルをインフラ分野で確立したのは、我々がほとんど初めてに近い形だったのではないでしょうか」
この先駆的な取り組みは、多くの企業から関心を持って受け入れられた。単に技術的な作業をこなすだけでなく、後輩の教育に熱心であったり、運用の効率化を提案したりといった、現場での「プラスアルファ」の行動が顧客からの高い評価に繋がっている。同社では毎月「いいね事例」として現場のポジティブなフィードバックを集めており、こうした積み重ねが、顧客からの信頼や評価につながっていることがうかがえる。
リーマンショック、そしてAIがもたらす「第3の変革」
CLINKSの歩みの中で、最大の経営局面となったのが2008年のリーマンショックだ。1995年に業界入りして以来、「仕事は黙っていてもそこにあるもの」だという認識でいた河原氏にとって、初めて仕事が減るという事態は大きな衝撃だった。
河原氏:「10年以上経験したことのない恐怖の中で、どうやって乗り越えられるのかな、というのはすごく悩んだし、その時の経験というのは今もすごく生きてるんじゃないかなと思います」
そして現在、河原氏はリーマンショックに匹敵する、あるいはそれ以上の変革期として「生成AI」の台頭を注視している。一部の業務がAIに置き換わる可能性を認めつつも、河原氏の見立ては前向きだ。
河原氏:「AIを使いこなす人のところにこそ、より多くの仕事が集まっている。これまでのエンジニアの平均的なアウトプットを1とすれば、優秀な人は1.5を出していた。それがAIという武器を持つことで、普通の人が1.5、優秀な人は2のアウトプットを出せる時代になる。ITを名乗る以上、他の人より先にそのへんの技術を仕入れていくしかないのかな、と思っています」
河原氏は自身のキャリアを、3つの変革とともに歩んできたと振り返る。1つ目は、Windows 95によるネットワークの普及。2つ目は、スマートフォンの出現による劇的な変化。そして3つ目が、現在のAI革命である。
河原氏:「AIとともに未来に何を残せるのかというところを、今後は本当に力を入れて、我々としても何か残していきたいと考えています」
組織の壁と「人事機能」の整備。大企業のノウハウを学ぶ段階へ
組織が1,000人規模に拡大した今、河原氏が直面しているのは、理想を組織全体に浸透させる難しさ、すなわち「もどかしさ」である。
河原氏:「いろんな意味でもっとこうでなきゃいけない、もっとこうでありたいっていう場面というのは本当にたくさんあるんですけど、なかなかそれが自分の思った通りに進んでくれない。もどかしさは感じますね。その時は、直接伝えるしかないなと思っています」
特に次のステップとして挙げているのが、組織管理の仕組み化だ。CLINKSには現状、採用部は存在するが、独立した機能としての「人事部」がまだ確立されていない。
河原氏:「一人ひとりのキャリアプランを詳細に管理し、サポートする。大企業が長年蓄積してきたこうした人事ノウハウを、どう取り込んでいくか。ただ人事部という「箱」を作れば済む話ではなく、長年かけて蓄積されたノウハウに学ぶべき点は多い。組織としての厚みをどう持たせるか、現在はその試行錯誤の段階です」
また、テレワークについても同社は早期から取り組んできた。公式サイトによれば、2016年からテレワーク勤務制度を導入。河原氏自身も「リモート派」であり、エンジニアの希望に寄り添いつつも、リモート環境下でいかに成果を出し続けるかという仕組みづくりを模索し続けている。
死を意識した経験が強めた、「後悔しない」ためのメッセージ
河原氏は、一昨年から去年にかけて重い病で倒れ、実際に「死にかけた」という壮絶な体験を語った。この経験が、彼の挑戦への姿勢をさらに強固なものにした。
河原氏:「やっぱり、自分が元気なうちに、生きているうちに、やりたいことやっておかないと後で後悔する。自分自身、その想いで今は本当にやらなきゃいけないこと、やりたいことというのをしっかりやっていこうと思って復帰しています」
起業を目指す若者や挑戦を志す人々へ、河原氏が贈るエールは、自らの体験に裏打ちされた切実なものだ。
河原氏:「若い頃は時間が無限にあるように感じるかもしれません。でも、後になって『あの時やっておけばよかった』と後悔することほど寂しいことはない。自分がやっぱり若い頃にこういうことやっておけばよかったな、というような後悔はしないようにしてほしいな、というのはすごく思います。今この瞬間の情熱を大切にしてください」
ITの荒波に揉まれながらも、エンジニアが「面白い仕事」に没頭できる未来を切り拓く。CLINKSはAIという変革期の中で、新たな挑戦を続けている。
※ IT人材の不足と育成の必要性
2030年には最大約79万人の人材不足が懸念されており、未経験者の育成は国家的な課題となっています。
出典元:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)
記事要約
- 創業の背景:客先常駐型エンジニアが自社と疎遠になり、3年間一度も会わない部下がいるといった業界の働き方に疑問を持ち、エンジニアが正当に評価され、やりたいことを実現できる環境を目指して独立。
- 独自の成長モデル:深刻な人手不足が続くインフラ分野において、未経験者を教育して現場に送り出すビジネスモデルを、業界でも早い段階で確立した。
- 3つの変革とAI:Windows 95、スマホ、AIを「3つの変革」と捉える。AIを個人のアウトプットを最大化する武器と考え、エンジニアの技術向上を重視。
- 組織課題:1,000人規模の組織となり、大企業の持つ人事管理ノウハウやキャリアサポートの仕組みを取り込み、組織としての厚みを増すことを目指している。
- 人生の指針:大病を患い死を意識した経験から、「元気なうちにやりたいことをやる」「後悔しない」という強い信念を持ち、若い世代にも挑戦を促している。
取材企業の概要
- 企業名
- CLINKS株式会社
- 本社
-
〒104-0032
東京都中央区八丁堀1-10-7 TMG八丁堀ビル10F
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