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注目企業特集

「80年前の法律」と「療養費およそ1%」の壁に挑む。SOSEITechが描く、治療家の地位向上への執念

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SOSEITech株式会社

代表取締役 秋谷貞男様

目次

2008年、リーマンショックの荒波が世界を飲み込んだ。その最中に産声を上げた一社がSOSEITech株式会社だ。代表取締役の秋谷貞男氏は、半導体業界という「ハイテク」の極地から、一転して訪問鍼灸マッサージという「超アナログ」かつ「規制の壁」が立ちはだかる医療・福祉の世界へと舵を切った。

秋谷氏の問題意識は「日本を支えているのは大手ではなく、下請けの中小企業とも言える」という点にある。サービスを支える技術者が正当に評価されない現状を変えたい、という純粋な義憤から始まった同社の歩みは、いつしか「制度の歪み」そのものとの闘いへと変貌を遂げていった。80年間アップデートされない法律、旧態依然とした業界慣習、そしてメディアの保守性。これら全ての「壁」に正面からぶつかりながら、秋谷氏が見据える日本の未来と、実業に懸ける想いを深く掘り下げた。

半導体エンジニアの地位向上とリーマンショックの洗礼

秋谷氏のキャリアの出発点は、半導体の世界にある。独立前、半導体商社で海外メーカーとのビジネスに携わっていた彼は、日本と海外のエンジニアを取り巻く環境の差に愕然としたという。

秋谷氏:「海外なら優秀なエンジニアは弁護士並みの給料が当たり前。しかし日本ではステータスが驚くほど低い。そして、大手企業が何もしない一方で、実際には下請けの中小企業が必死に技術を支えている。その人たちを何とかしたい、エンジニアの地位を上げたいという思いが、2008年の独立の原点でした」

しかし、独立直後にリーマンショックが直撃する。国内の製造業が冷え込む中、秋谷氏が次に見出した活路が、当時成長産業と目されていた医療・ヘルスケア分野だった。半導体で培ったハードウェアの知見を活かせると考えたが、そこには既存の巨大な「癒着の構造」と「参入障壁」が待ち構えていた。

紆余曲折を経て、国の方針が病院治療から在宅医療・介護へとシフトする流れを掴み、同社は訪問看護や訪問鍼灸マッサージといった在宅ケアの世界へ参入することになる。

「音声認識」が通じない現実を受け、訪問鍼灸マッサージを主軸に

医療・ヘルスケアに舵を切った当初、秋谷氏はテクノロジーによる解決を模索していた。高齢者向けに音声認識技術を活用したソリューションを構想したが、そこで直面したのは「現場のリアル」だった。

秋谷氏:「健常者には99%以上機能する音声認識も、歯が抜けてしまったり、滑舌が不明瞭になったりした高齢者の方々の言葉には、アルゴリズムが対応できなかった。ハイテクを必要とする以前に、現場にはもっと泥臭い課題が山積みだったんです」

この経験を経て、同社は厚生労働省管轄の「訪問鍼灸マッサージ」事業を軸に据えることとなる。そこで秋谷氏が見たのは、国が認めた「健康保険が使える素晴らしいサービス」であるにもかかわらず、制度と実態の歪みによってその存在が世の中に埋もれているという理不尽な現状だった。

80年前の法律が縛る「治療家」の未来

秋谷氏が注力している課題の一つが、鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師といった「治療家」たちの社会的地位の向上だ。

秋谷氏:「彼らは国家資格を取るために、3年間で500万〜600万円という私財を投じて専門学校に通います。しかし、彼らを縛っているのは80年前の法律。当時はホームページなんて概念すらありませんから、法律に記載のない広報活動は全てNG。値段の表記すら満足にできないんです」

この規制によって、卒業後に起業しても広告・広報の制約で集客が難しく、キャリア形成に苦労するケースもある、と秋谷氏は見る。さらに業界を苦しめているのが、国の予算配分の歪みだ。医療費全体に対してマッサージなどが含まれる「療養費」は約1%(*)に過ぎない

秋谷氏:「厚労省からすれば、所詮1%の人達。だから80年も法律が放置されている。だからこそ、民間である我々が広報の力でこの現状を打破しなければならないんです」

ペットの「老老介護」すらタブー視されるメディアの保守性

秋谷氏は自院の利益だけでなく、サービスそのものの認知拡大のために、キー局のディレクター陣へのプレゼンなど積極的な広報活動を展開してきた。そこで突きつけられたのは、日本のマスメディアが持つ「薬機法」への過剰なまでの拒絶反応だった。

秋谷氏:「『ペットも飼い主も老老介護』という社会問題を切り口に提案しても、彼らは『マッサージ』という言葉を聞いただけで薬機法に条件反射して門前払いをしてしまう。治る・治らないの話ではなく、在宅生活を維持するための有効な手段であることを伝えたいだけなのに、その入り口が閉ざされている」

正攻法のメディア露出が困難を極める中、秋谷氏はKindleで書籍を出版(『たった500円程度で超親孝行』)するなど、まずは利用者本人だけでなく、その子ども世代に情報を届けるための「ひねり」を加えた施策を続けている。

本質の追求と「細心大胆」

変化の激しい現代において、秋谷氏が経営判断の軸に据えているのは「本質の追求」だ。

秋谷氏:「日本人は狭い世界に生かされ、外のことを知らないのではと思うことがある。でも、どの業界も本質は同じ。自分の立ち位置を客観的に自覚し、働くことのベースを理解させることが重要だと考えています」

創業時から大切にしている言葉は「細心大胆」。やる時は大胆に動くが、その裏側では徹底して細部のチェックを怠らない。このバランスが、リーマンショックやコロナ禍といった未曾有の危機を乗り越える原動力となった。また、組織づくりにおいても独自の哲学を持つ。同社の治療院では、あえて「担当者制」を徹底している。

秋谷氏:「大手のチェーン店は効率を重視してシフトで担当を回すが、うちは違う。9割がコミュニケーション。おじいちゃんおばあちゃんに可愛がってもらい、あなたに会えるのが楽しみだと言ってもらえる信頼関係を築くこと。それが最大の特徴であり強みです」

「芯」のない起業への警鐘

インタビューの終盤、秋谷氏は起業を目指す若者たちへ、あえて厳しい、しかし愛のある言葉を投げかけた。

秋谷氏:「今の若い子たちはデジタルネイティブで、効率よくお金を回すのが非常に上手い。学生のうちに何社も売却したという話も聞く。しかし、そこに『芯』はあるのか。ただのマネーゲームではなく、世の中をこう変えたいという実業の魂を持ってほしい。戦後の日本人が持っていたようなプライドを、もう一度持ってほしいんです」

日本は明治維新や戦後に匹敵するほどの価値観の転換期にあると秋谷氏は指摘する 。大手企業の旧態依然とした体質や、機能不全に陥った国の仕組みに絶望するのではなく、一人ひとりが自立し、「日本人としての誇り」を持って仕事に向き合うこと。それこそが、同社が訪問マッサージという実業を通じて体現しようとしている「再生」への道しるべなのだ。


厚生労働省発表の「令和4年度 国民医療費の概況」
によると、国民医療費総額46兆6,874億円に対し、マッサージや鍼灸等を含む「療養費等」の総額は5,456億円であり、全体に占める構成割合はおよそ1.2%となっています。

記事要約

  • 創業の動機:日本を支える中小企業の技術者やエンジニアの地位を向上させたいという思いから2008年に創業。リーマンショックを機に、半導体設計支援から医療・ヘルスケア分野へ転換した。
  • 事業の核心::訪問鍼灸マッサージ事業を主軸に。80年前の法律や薬機法の壁により広告・広報が制限されている業界において、広報PRの力でサービスの認知拡大を目指している。
  • 現場のこだわり:効率重視のシフト制ではなく「担当者制」を採用。治療技術以上に利用者(高齢者)とのコミュニケーションと信頼関係の構築を最優先(9割)としている。
  • 経営者の視点::日本の医療費における「療養費」の少なさや、世代間の価値観の乖離を冷静に分析する 。若い世代に対し、効率重視のマネーゲームではなく、社会を良くする「芯」のある実業への挑戦を促している。
  • 今後の展望:既存の治療院の拡大を図りつつ 、日本人が本来持つプライドを取り戻し、思考停止の洗脳から脱却して自立できる社会づくりに、事業を通じて寄与していく。

取材企業の概要

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企業名
SOSEITech株式会社
住所
〒232-0032
神奈川県横浜市南区万世町1-1

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