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日本茶を「コモディティ」から「作品」へ。WMATCHA.COが挑む、一次産業の構造改革と「世界代表企業」への道標
WMATCHA.CO合同会社
共同創業者 竹谷 俊哉様、浅木 照平
- 目次
日本の伝統産業がいま、静かに、しかし劇的な変革の時を迎えている。世界的な「MATCHA」ブームの到来により、農林水産省が掲げる『農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略』では、茶を重点品目に指定。2020年に約162億円だった輸出額を、2025年までに312億円へと『5年でほぼ倍増』させる野心的な目標を掲げている。事実、2023年には過去最高の292億円を記録し、目標達成は射程圏内だ。しかし、需要が高まる一方で、高齢化による離農、後継者不在、設備の老朽化など、生産現場では疲弊や後継者不足が課題として語られた。
この巨大な課題に、京都を拠点とする一軒のスタートアップが挑んでいる。WMATCHA.CO合同会社。アメフト時代の絆で結ばれた二人の若き経営者、竹谷氏と浅木氏が提唱するのは、お茶を単なる「モノ」から「作品(Art)」へと昇華させる「ダイレクトトレード・プラットフォーム」だ。
彼らはなぜ、安定したキャリアを捨ててまで茶畑に身を投じたのか。そして、彼らが描く「日本を代表する世界企業」への戦略図とは何か。その核心に迫った。
異色のタッグ、シリコンバレーの「Will」と資本主義の最前線

WMATCHA.COの物語は、高校時代のアメフト部で先輩・後輩の間柄だった二人の再会から動き出す。
代表の竹谷氏は、大学卒業後に米国サンフランシスコ州立大学へ留学した。そこで受けた衝撃が、後の起業の原動力となる。シリコンバレーの起業家たちが、自らの内なる意志(Will)に従い、社会の目や既存の枠組みに縛られることなく、正直に情熱を燃やす姿だ。 「自分も自らのWillを形にし、社会に価値を刻みたい」 帰国後、家業がかつて茶業を営んでいたというルーツ、そして海外で日本茶が受けている圧倒的なリスペクトの「熱量」が、彼の中で一つの線につながった。
しかし、竹谷氏は冷静だった。 「この巨大な産業を変えるには、1人では絶対に不可能だ。途中で投げ出すような人間ではなく、何があっても絶対に諦めない、魂の信頼を置けるパートナーが必要だ」 そこで白羽の矢を立てたのが、1つ上の先輩であり、アメフト部で共に泥にまみれた浅木氏だった。
当時の浅木氏は、外資系金融機関(モルガン・スタンレー証券)の日本株トレーダーとして、1日300億円もの資金を運用する、資本主義の「勝負の最前線」にいた。しかし、画面上の数字だけを追い求める極限のストレスの中、浅木氏は自身の存在意義を見失いかけていたという。
浅木氏:「竹谷から誘いを受けた当時、極限環境で体を壊した経験から『お茶を通じてウェルネスを届けたい』という竹谷のWillが、乾いた心に水が染み込むような感覚を覚えました。高額な報酬よりも、一人の人間として、誰かのために汗を流す生き方を選びたかった」
こうして、シリコンバレーの哲学を持つ開拓者と、金融市場を熟知したプロフェッショナルによる、茶業界の「再定義」が始まった。
現場で目撃した「市場の歪み」成長の裏にある不都合な真実
彼らがまず行ったのは、徹底的な「現場主義」の実践だった。カンヌ国際映画祭をはじめ、世界6カ国以上のバイヤーを直接訪問し、同時に日本各地の茶産地を歩き倒した。そこで突きつけられたのは、あまりにも残酷なミスマッチだった。
竹谷氏:「海外のこだわりを持つバイヤーが求めているのは、手間暇をかけて作られた、特定の生産者のストーリーが宿る『作品』です。しかし、日本の既存の流通システムは、効率や規格を重視した取引が多い。生産者の個性を消し、安く大量にさばく『コモディティ取引』が中心でした」
市場には需要がある。しかし、現場の生産者は疲弊し、所得は上がらず、加工機械を新調する資金さえない。「このままでは、世界が求めている最高品質の日本茶が、日本から消えてしまう」という危機感こそが、彼らがD2C(自社ブランド販売)という小規模なビジネスモデルを捨て、産業のインフラそのものを構築する「プラットフォーム事業」へと舵を切らせた要因だった。
日本茶を「作品」として定義するインフラ構築

2025年11月にプレローンチされたWMATCHA.COのプラットフォームは、単なる「お茶のECサイト」ではない。それは、日本茶の価値基準を根本から書き換えるためのシステムだ。
①「物差し」の変更
竹谷氏:「これまでは量や規格で決まっていた価格を、生産者の想いや熱量、土壌の物語という『作品性』で評価する。お茶を農作物ではなく『アート』として捉えることで、適切な付加価値を表現できる仕組みを作りました」
② ダイレクトトレードの徹底
中間流通を極限まで排除し、海外バイヤーと生産者を直結させる。これにより、生産者の所得向上につながる設計で、次世代が「夢を持てる産業」へと再編する。フランスの茶商からも価格の透明性や無農薬へのこだわりに共感する好意的な反応があった。
③ B2B特化の信頼醸成
同社は、海外のこだわりを持つビジネスパートナーに特化している。単なる売買の関係を超え、日本の精神性や茶道の文化背景までをパッケージ化して届けることで、安売り競争に巻き込まれない強固な参入障壁を築いている。
近江商人の知恵と現代のウェルネス
彼らの判断基準は、驚くほどシンプルで、かつ強靭だ。その核にあるのは、近江商人の教えである「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」である。
浅木氏は、かつてのトレーダー時代を回想しながらこう語る。「金融の世界は、スプレッド(利ざや)を抜くことで利益を得る、ある種のゼロサムゲームの側面がありました。しかし今は、私たちがプラットフォームとして介在することで、生産者の所得が上がり、バイヤーが最高の作品を手にし、それを通じて消費者が精神的な豊かさ(ウェルネス)を得る。この『善の循環』を最大化することこそが、私たちの成長指標です」
このビジョンは、単なる理想論に留まらない。京都市主催のビジネスコンテストや、全国規模のビジネスコンテスト「みんなの夢AWARD」でファイナリストに選出されるなど、社会課題解決と収益性を両立させるモデルとして、各界のリーダーからも熱い注目を浴びている。
「お茶の業界から、任天堂やユニクロを作る」
取材の終盤、竹谷氏は眼光を鋭くし、驚くべき目標を口にした。「私たちは、この茶業界から『日本を代表する世界企業』を作ります。ゲームといえば任天堂、服といえばユニクロ。それと同じように、日本文化の象徴であるお茶において、世界中でその名を知られる存在になりたい」
彼らが目指すのは、既存の大手飲料メーカーとの競合ではない。先人たちが築いた「日本茶」という世界的な認知の上に、より深い「精神性」と「アート性」という新たなレイヤーを上書きすることだ。
2026年には「Forbes カルチャープレナー」への選出を一つのマイルストーンに掲げている。文化を創り、産業を再生させる「文化起業家」としての自覚が、彼らの言葉の端々に宿っている。「和束町の日本茶をダボスへ」。世界経済フォーラムの舞台に、自分たちが支援する生産者の最高傑作を届ける。その日を見据える二人の表情に、迷いは一切ない。
自らの「Will」を解放せよ
最後に、起業を志す若者や、最前線で戦うビジネスマンに向けて、二人は力強いエールを送ってくれた。
竹谷氏:「ぜひ会って話しましょう、と言いたいです。自分自身の内側から湧き出る『Will』を信じ、それを解放してほしい。正直に行動した先にしか、本当の景色は見えません」
浅木氏:「孤独を恐れず、自分の個性を磨き続けてください。将来の可能性(Can)を広げるために、今この瞬間に全力を尽くす。その積み重ねが、いつか世界を動かす大きな力になると信じています」
※ 農林水産省:茶業及びお茶の文化に係る現状と課題(PDF)
2020年時点の約160億円から、2025年に312億円(約2倍)にする目標
※ 農林水産省:食料・農業・農村白書(令和6年版)
「令和7(2025)年の茶の輸出額目標312億円を達成(見込み)」といった、進捗状況についても触れられています。
記事要約
- 市場の再定義:世界的な抹茶ブーム(市場の伸び)と生産現場の疲弊(供給の危機)というギャップに着目し、高級茶市場をターゲットに据えた。
- 作品としての流通:お茶をコモディティではなく「作品(Art)」と再定義。生産者のストーリーを多言語化し、B2Bダイレクトトレードを構築。
- 三方よしの経済圏:海外バイヤーのニーズ(透明性とストーリー)と、生産者のニーズ(所得向上と継続性)を、プラットフォームという形で完全に合致させた。
- 国家代表への志:茶業界において、任天堂やユニクロに比肩する「日本発の世界企業」を目指し、伝統を守りながらビジネスモデルを革新。
取材企業の概要
- 企業名
- WMATCHA.CO合同会社
- 住所
-
〒619-1221
京都府相楽郡和束町大字石寺小字大屋垣内8番地
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