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注目企業特集

エンタメの力で語学の壁を壊す――AI搭載「gymglish(ジングリッシュ)」が描く、スモールスタートからの教育革命

筒井代表アイコン

KOLENDA Japan株式会社

代表取締役 筒井 良子様

目次

日本の語学教育は、長らく「受験」や「テスト対策」の延長線上にあった。TOEICのスコアアップに血道を上げ、正確な文法と和訳を追求する。その結果、多くの学習者が「勉強としての語学」に疲弊し、実用的なコミュニケーションに到達する前に挫折していく。

こうした日本の語学学習のあり方に、一石を投じる企業がある。KOLENDA Japan株式会社だ。同社が展開するAI搭載型オンライン語学レッスン「gymglish(ジングリッシュ)」は、従来の「真面目一辺倒」な学習とは一線を画す。

「語学は本来、文化的な行為であり、楽しむものである」

そう語るのは、同社の代表を務める筒井氏である。フランス発のテクノロジーと、ヨーロッパ流の語学アプローチを日本に持ち込んだ同氏の軌跡と、その根底にある「想い」を追った。

ユーザーとしての感動が創業の原動力

KOLENDA Japanは、フランスのベンチャー企業が開発したAI搭載型語学学習プログラム「gymglishシリーズ」の日本代理店として、2022年から国内展開を開始した。その創業のきっかけは、代表の筒井氏自身のパーソナルな体験にある。

2020年まで東京で働いていた筒井氏は、ドイツ人との結婚を機にドイツへ移住。その際ドイツ語を習得するため、あらゆる学習ツールを試行錯誤する中で出会ったのが「gymglish」だった。

「私自身が元々、このサービスのユーザーでした。ドイツ語のレッスンを受けていたのですが、そこで受けた衝撃が今の事業につながっています」と筒井氏は振り返る。

かつてアメリカの大学院留学のために、いわゆる「日本的な真面目な英語学習」を経験してきた筒井氏にとって、gymglishのアプローチは目から鱗が落ちるものだった。そこには、テスト対策ではない「言葉を習得するための本質的な仕組み」が組み込まれていたのである。

ヨーロッパ流「楽しむ語学」の衝撃

筒井氏が特に魅了されたのは、レッスンの内容に宿る圧倒的なエンターテインメント性だ。

筒井氏:「gymglishのコンテンツは、クリエイティブライティングの専門家が制作しています。まるで漫画を読んでいるような感覚で、楽しみながら続けられる。これこそが、ヨーロッパの人々がマルチリンガルになっていく際のアプローチそのものだと感じました」

ヨーロッパでは、映画や小説を楽しみながら自然に複数の言語を習得する人々が珍しくない。一方、日本の教材は「受験勉強の延長」のようなストイックなものが多く、学習のハードルを自ら高くしてしまっている側面がある。筒井氏が体験したドイツ語のレッスンでは、ある女性医師が亡くなった祖母から巨大なホテルを相続し、経営に奮闘するという連載形式のストーリーが展開された。

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筒井氏:「亡くなったおばあちゃんが幽霊のように出てきて指示を出してくるんです。その指示と、覚えるべき単語がストーリーの中でピタッと重なる。感情移入できるコンテンツで学ぶことで、単語が驚くほどスムーズに頭に入ってきました」

この「面白いから続けられる」「感情が動くから記憶に定着する」という脳科学の知見に基づいた設計こそが、同氏に日本での起業を決意させた。

AIによる個別最適化を始めとした科学的アプローチ

gymglishは単なる「楽しい読み物」ではない。その裏側では、高度なAIテクノロジーが学習効率を最大化させている。

主力サービスである「gymglish」シリーズは、AIによるアダプティブ・ラーニング(適応学習)を採用している。1日15分程度のレッスンにおける回答結果を、AIが過去の膨大な受講生のデータと統計的に照らし合わせ、その個人の現在のレベルを瞬時に特定する。そして、次回のレッスンをその人に最適化(カスタマイズ)して提供する仕組みだ。さらに特筆すべきは、記憶の定着をサポートする復習システムである。

「人間には『忘却曲線』がありますが、AIがそのタイミングを正確に捉え、過去に間違えた単語や文法を忘れた頃に再び提示します。これにより、短期的な暗記ではなく長期記憶への定着を確実に促すのです」と筒井氏は解説する。

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レッスンは多読・多聴を中心としながらも、AIとの会話演習も組み込まれており、インプットとアウトプットのバランスが計算し尽くされている。技術の力を使って語学のハードルを下げる。これが、開発元であるフランス企業の揺るぎないコンセプトである。

クラウドファンディングでの確信と挑戦

2022年、日本での販売を開始するにあたり、筒井氏には不安もあった。

筒井氏:「日本にある従来のプログラムとは明らかに毛色が違います。このエンタメ性が、真面目な学習を好む日本人に受け入れられるのかという葛藤はありました」

その不安を払拭したのが、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」でのテストマーケティングだった。結果として267名の支援を獲得。日本でも「楽しみながら学びたい」という潜在的なニーズが確実にあることを確信した。顧客とのエピソードの中でも、筒井氏の心に強く残っているものがある。70代の女性から届いた「イタリア語を学びたい」という連絡だ。その女性は、レッスンのためにわざわざパソコンを購入し、パソコン教室の先生に手伝ってもらいながら無料トライアルに申し込んだという。

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筒井氏:「私のSNSでの発信を通じて、レッスン自体の楽しさが伝わった結果でした。年齢に関係なく、新しい言語の世界に飛び込もうとする姿には、私自身も非常に感銘を受けました」

こうしたユーザーの姿こそが、KOLENDA Japanが目指す「人生をより豊かにする語学」の体現に他ならない。

既存の教育への「問い」とこれからの役割

筒井氏は、日本の英語教育の現状についても冷静な視点を持つ。

筒井氏:「日本の教育カリキュラムは、1960年代のものをベースにしていると言われています。正確な和訳や作文を重視するあまり、圧倒的にインプット(多読・多聴)が足りていないのが現状です」

語学が習得できないのは「会話の練習が足りないから」だと思われがちだが、実際にはその前段階としての大量のインプットがまだまだ不足しているという指摘だ。筒井氏が企業として果たしたい役割は、自社製品を売ることだけにとどまらない。

筒井氏:「語学にはコツがあります。そのコツさえ掴めば、実はツールは何でもいい。gymglishでなくてもいいんです。ただ、語学を通じて異文化に触れ、人生を豊かにしてほしい。そのための正しいアプローチを伝え続けていきたいと考えています」

語学を「苦行」ではなく、新しい世界へ繋がる「文化的な楽しみ」へと変えていく。これが同社の掲げるミッションである。

AI時代の「スモールスタート」という起業スタイル

経営者としての筒井氏のスタイルは、極めて現代的かつ合理的だ。同社はいわゆる大規模な組織を持たず、筒井氏自身と事務サポート、エンジニアといった最小限の体制で運営されている。

筒井氏:「元々エンジニアだったこともあり、AIや各種ウェブツールを使って業務の多くを自動化・アウトソースできています。必ずしも大きな組織を作ることが正解ではなく、現状のオペレーションが最適に回っているのです」

かつては教育ベンダー大手である株式会社Aoba-BBT(旧株式会社ビジネス・ブレークスルー)に在籍し、大前研一氏のもとで起業家プログラムなどにも触れてきた筒井氏。当時は「起業とは投資家の前でプレゼンし、多額の資金を調達して行う大それたもの」というイメージを持っていたという。しかし、実際に自身で事業を始めてみて得た実感は異なる。

筒井氏:「今はAIなどのツールにより、リスクを抑えた『スモールスタート』が可能です。最初から華々しい成功を狙うのではなく、自分の想いを中心に、少しずつ伸ばしていく。こうした地味かもしれませんが着実なアプローチも、今の時代には適した選択肢ではないでしょうか」

起業を目指す若者やビジネスマンに対し、同氏は「まずは情報に触れ、リスクのない形から始めてみること」の重要性を説く。

語学の文化を共に広げる

KOLENDA Japanが提供するのは、単なるeラーニングのライセンスではない。それは、日本人が抱える「語学コンプレックス」からの解放と、未知の文化に触れる喜びの提供である。

筒井氏:「テストの点数以上に、言葉の先にある人や情報、文化に目を向けてほしい。そうした語学の楽しみを、日本の皆さんと一緒に広げていきたい」

AIという最先端の武器を携えながら、その中心にあるのは常に、筒井氏がドイツの地で感じた「学ぶ楽しさ」という極めて人間的な熱量だ。KOLENDA Japanの挑戦は、日本の教育のあり方を、より自由で創造的なものへと変えていく一歩となるだろう。


【gymglish(ジングリッシュ)について】

2004年にフランスで設立されたGymglish社が開発・提供するAI搭載型オンライン語学学習サービス。世界で800万人以上の学習者に利用され、6,000社以上の企業・教育機関・公共団体に導入されています。

1日約15分のレッスンは、ストーリー形式のコンテンツを通じて語学と文化の両方を学べる設計が特長です。AIによるアダプティブ・ラーニング(適応学習)機能を備え、学習者一人ひとりのレベルや進捗に合わせて最適化されたレッスンを提供。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語など複数言語に対応しています。

参照元:Gymglish公式サイト〈英語版〉

【脳科学的知見について】

本記事で言及されている「感情と記憶の関係」については、神経科学において「情動(感情)的に重要な出来事は、中立的な出来事よりも記憶に残りやすい」という知見(情動記憶)として広く知られています。これは脳の「扁桃体」が「海馬」を活性化させる仕組みによるものです。

参照元:脳科学辞典「情動記憶」

記事要約

  • 事業内容:フランス発のAI搭載型オンライン語学レッスン「gymglish(ジングリッシュ)」の日本代理店。2022年より国内展開を開始。
  • 主力サービス:1日15分の短時間レッスン。クリエイティブライティングの専門家によるエンタメ性の高いストーリーと、AIによる忘却曲線を考慮した復習システムが特徴。
  • 創業の背景:代表の筒井氏がドイツ移住時に自らユーザーとしてサービスを体験し、その学習効果と楽しさに感動したことがきっかけ。
  • 経営理念:語学をテスト対策の「勉強」から、人生を豊かにする「文化的な楽しみ」へとシフトさせる。正しい語学の習得プロセス(多読・多聴)を広める。
  • 起業スタイル:多額の資金調達や大規模組織を目指すのではなく、AIや外部リソースを活用してリスクを抑えた「スモールスタート」を実践。

取材企業の概要

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企業名
KOLENDA Japan株式会社
住所
〒156-0045
東京都世田谷区桜上水1-4-1 パークナード経堂702号室
言語別
ページ
【英語】https://kolenda.co.jp/gymglish/
【ドイツ語】https://kolenda.co.jp/wunderbla/
【フランス語】https://kolenda.co.jp/frantastique/
【スペイン語】https://kolenda.co.jp/hotel-borbollon/
【イタリア語】https://kolenda.co.jp/saga-baldoria/

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