台風の夜、東京・田園調布の町の一部が多摩川の氾濫で2メートル近く浸水しました。背景にはどのような状況があったのでしょうか。

高級住宅街の代名詞、大田区田園調布に似つかわしくない光景が広がっていました。多摩川沿いの田園調布の一部では台風による浸水被害が。水は、取り残された住民をボートで救出する隊員のひざ上ほどまでありました。田園調布4丁目と5丁目では浸水被害の報告が590件に上っています。
田園調布を襲った水は多摩川の水ではなく、支流の丸子川からあふれたものでした。台風当日、丸子川では排水作業も行われていましたが何があったのでしょうか。
12日午後5時。丸子川の水位が上昇したため、大田区は備え付けのポンプゲートを作動させたり、区や消防のポンプ車を使い丸子川の水を多摩川へ排水し始めました。現地では区の職員や消防隊員など約30人が作業にあたりました。しかし、作業から1時間後の午後6時。今度は、多摩川の水位が増してきました。多摩川の水位が上がれば排水ポンプと一体化した水門から水が逆流し、丸子川に流れ込む恐れがあります。逆流を防ぐため排水ポンプを停止し水門を閉じることになりました。これで丸子川はポンプ車だけの排水となりますが、そんななか、大田区に避難指示が出ます。これを受けて12日午後7時。ポンプ車で排水にあたっていた区の職員や消防隊員も避難せざるを得なくなったのです。
排水作業が再開できたのは現地の安全が確認された一夜明けた13日朝のことでした。排水作業が止まっていた間に丸子川はあふれてしまいました。
大田区のコメント:「職員の人命を考えると作業を中断せざるを得なかった」
こう決断したという大田区。職員の命を取るか、排水作業を取るか。排水が10時間停止した背景には厳しい選択がありました。
 今回、浸水した田園調布のエリアを地図で見てみますと、田園調布4丁目と5丁目、駅から数百メートルしか離れていないエリアだったんです。大田区によりますと、避難指示が出ていたのは12日午後7時。この時点で実は、多摩川の水位が職員のすぐ目前まで迫っていたそうなんです。堤防の上で足元まで水がきていた。作業を中断したのは「本当に非常に危険ななかで限界だったから」と説明しているわけです。
 河川工学に詳しい東京工業大学の鼎信次郎教授によりますと、実は避難指示が出ていた午後7時の時点で田園調布の近くにあった観測所、水位が氾濫水位よりも1.4メートルも上でした。いつ堤防が崩れてもおかしくない状態でむしろ、この時間での退避というのは遅かったくらいだと指摘しています。今後は、人の手をかけずに排水作業ができるようにこういった仕組みづくりを変えていく必要があると鼎教授は言っていました。

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